※切島くん視点




 ほどけた靴ひもを結ぶ目の高さから見上げた、密な世界の一ミリのほころび。
 どんなときでも、どこに居ても、いやおうなく輪の中心をつくってしまうような男が、ひとり凪いだ静けさを纏って足を止めている。さざ波ひとつたたない遠浅のような眼をして、更衣室を出た先の外通路からグラウンドを見下ろしている。――爆豪、どうした? 声をかけようとしたとき、俺を一足飛びに追いこして後ろから割り入ってきた上鳴と瀬呂が、爆豪の肩に両脇から腕をまわした。二人のやじ馬の騒々しい視線が、滅多にないアイツの静寂をたちまち覆い隠してしまう。
 晴れ晴れとした過ごしやすい毎日が途切れて、今日は真昼をくすませる仄暗い雲が低いところまで降りている。このまま短い秋がだんだんと翳ってもう戻ることはないのだろう。新しい季節の冷気を肌のおもてに感じて、俺はジャージのファスナーを首もとまで引き上げた。

「経営科がグラウンド使ってんのめずらしいよなー」
「うわ、『個性』なしでハードル走かよ。きっつ」

 靴ひもの縦結びから手を離し、三人に追いついて、俺もふもとの授業に目を向ける。グラウンドではちょうど一年生の経営科の三クラスが合同で体育の授業をこなしているようだった。遠目にも経営科独特の、汗水流してからだを動かすということに対するどことなく斜に構えた、ゆるい雰囲気が伝わってくる。天下の雄英高校で前時代的な「個性」禁止授業。つっても、俺たちだって今、揃いのジャージに着替えて別棟のトレーニングルームに向かうところで、毎日ヒーローコスチュームでド派手な戦闘訓練をするわけじゃない。からだを鍛えることを目的とした地味な基礎練は案外多い。まあ経営科の場合はたんに日ごろの運動不足を解消するためだと思うが。

「おっ、奥のコース走ってんの、さんじゃん。ほら、合同実習で爆豪と組んでた子。結構はやくね?」

 爆豪の肩を組んだまま、上鳴が急に腕を伸ばして、四百メートルのトラックを今まさに駆け抜けている女子のひとりを指さした。爆豪の左肩に腕を乗せていた瀬呂が、それを受けて遠くを眺めるように手を目の上にかざす。自分を飛び越えて遠慮なく会話を続ける二人に挟まれ、爆豪がどんな顔をしているのか気にかかったけれど、視線を上げてもそれを見通すことはかなわなかった。
 
「そうだっけかぁ? お前よく覚えてんな」
「同学年のかわいこちゃんはチェック済みだから。文化祭もウチのステージ観に来てたし」
「チャラいわあ」

 けらけらと、瀬呂が上鳴をからかうように笑う。その横で、彼女の名前も、すがたも、しっかりと記憶していた俺には上鳴の目ざとさを笑えるよしもない。妙に腹のなかが落ち着かないような気がするのも、そのせいだ。
 目下おこなわれている経営科のハードル走は、一度のスタートで男女交互に五人ずつ、いちおうタイムを計って走っているようだったが、みな思い思いに自己流の走り方をしているせいで、あまり競技としての体はなしていなかった。そのなかでも、しっかりと腕を振って、きれいなフォームで懸命に前を向いて走っていた彼女は、二位をだいぶ引き離して独走状態に入っていた。弾むポニーテール。俺たちの視線の集まる先、さんが軽やかに脚をひろげて飛んだ。

「コケる」

 ぎくりとした。鋭く迷いのない声だった。ずっと黙っていたかと思えばいきなり、まるで予言めいたことを言う。みごと軽やかにハードルを越えた直後だったので、上鳴と瀬呂が同時にふしぎそうに首をかしげたのもつかの間、爆豪のその一言が彼女の羽根をもぎとってしまったみたいに、数秒後、最後のハードルを越えきれず彼女は派手に転倒した。なんとか起き上がって走りきったものの、倒したハードルをご丁寧に直していた律義さがあだとなり、もう順位を挽回することはできなかった。爆豪の言ったとおりの決着がついて、瀬呂は目を見張りながら、ひゅう、と驚きをこめて口笛を吹いた。

「マジだ。なんでわかった?」
「ペース配分できねぇバカだから。直線入ってから足が回ってねえ」
「女の子にバカて……どう思いますー? 瀬呂さん」
「ん~、これはヒーローにあるまじき問題発言ですね~」

 テレビでよく見るヒーロー公安委員会のご意見番のマネをして、瀬呂がいつもの、お決まりのノリで爆豪の暴言を流すのを、俺はどこかうわの空で聞いていた。ああ、と思った。胸に引っかかっていた静寂の意味が、するりとほどけて腑に落ちていく。ついさっき爆豪が見下ろしていた一点。あのとき、奴の目に映っていた光景がどういうものだったか、もう、俺の目の前にもはっきりと浮かびあがってくるような気がした。
 つねに導火線に火がついているような男が、自分からふっとその火を消すとき。その瞬間を、俺は見たのだ。



 一学期、期末テストが済んでもうすぐ待ちに待った夏休みが始まろうとしていたころ、雄英の学外で偶然、爆豪のことを見かけた。教員会議があるとかで、めずらしく午後の授業が早めに切り上げになった放課後のことだった。俺は演習で使い古したシューズの替えを物色しに、雄英の最寄りの駅から三つ行ったところにある大型のサポートアイテムショップに出向いて、その帰りだった。全七階、テーピングからマニアックな「個性」補強具まで、ヒーロー科の奴らならよく世話になる定番の店だ。あまりに品ぞろえが良いせいで、思いのほか足に合うシューズ選びに手間取ってしまい、帰路につくころにはもう、退勤するサラリーマンがちらほらとホームに並びはじめる時間帯にさしかかっていた。七月の暑い日。陽射しが濃い影を落とし、まぶしく、電光掲示板の文字が白く発光して消える。

「――あれ、爆豪?」

 暑苦しいスーツの波の合間から、あの特徴的な癖毛がちらついた気がして、思わず独り言のようにその名前がこぼれた。夏服の、深緑のエポーレット。ひとをかきわけ、今度ははっきりと声をかける。爆豪、と。神経質な三白眼がこちらを向く。教室で毎日顔を合わせている奴でも、こんなところで出くわすと妙な感じの嬉しさがあった。

「切島」
「うおー偶然だな。なに、お前もなんか買い出し? みずくせぇな、だったら一緒に……」

 そのまま近づきながら揚々と話しかけ、途中で言葉を切ったのは、爆豪がひとりで居るのではないと気づいたからだった。爆豪の影に隠れて、初めに声をかけたときには見えなかったが、奴のそばにはもうひとりの雄英生が立っていた。同じ、エポーレットがついた半袖シャツ。膝丈のプリーツスカート。爆豪のとなりから現れたその貌にはうっすら見覚えがあったが、俺はまだ、彼女の名前をちゃんとは知らなかったし、話したこともなかった。

「えーっと確か……」
「あ、ええと、初めまして。I組のです」
「お、こちらこそ初めまして。A組の切島です」

 爆豪を挟み、ぎこちない自己紹介をかわして、お互いに浅く会釈しあう。そうだ、経営科の「」さん。一ヵ月前の午後の授業で、黒板に貼られた一枚の紙に、爆豪の名前と並んでその名前を見たような気がする。いーよなー女の子とペア、と上鳴がたいそう羨ましがっていたことまで一緒に思いだしてしまい、頬にじわりと血が集まる。その「女の子」が目の前に居て、薄青い大きなまなこがシャッターを切るようにまばたき、俺に向かって遠慮げに笑んだから。爆豪が小さく溜め息をついた。俺を見てか、さんのほうを見てだったかは、分からない。

「買いモンじゃねえよ、こいつと明日の打ち合わせしてただけだ」
「打ち合わせ……ってああ、そっかお前ンとこ、明日アレの発表か」

 顎をしゃくって爆豪はなんでもないふうに「二人」のわけを話した。アレ、というのは体育祭が終わり、一週間の職場体験から戻ってきたころに始まった、経営科との合同授業のことだ。それは、経営科にとっては選択必修の科目らしく、ヒーロー科の生徒と経営科の生徒がひとりずつペアになって、それぞれの「個性」の活用法や社会貢献の仕方を考えるような週に一コマの実習授業だった。初回の座学のあとは、図書室やパソコンルームに散って作業するような授業だったが、先週と今週はその研究成果を各々発表する時間に充てられていた。

「わたし、人前で話すのとか得意じゃないから……爆豪くんに段取りとか、相談に乗ってもらってたの」

 ホームに快速電車が入ってきて、俺たちは三人でその車両に乗りこんだ。人の流れに押しやられるまま、やや混みあった車内の反対側のホームドアの前まで行き着き、ゆっくりと電車が動きだす。彼女はナイロンのボストンバッグではなく、少し古めかしい、革製の手さげの学生かばんを持っていて、それを両手で胸に抱えるようにして細い肩をまるめていた。

「はあー、さすが完璧主義だな。俺なんか向こうに任せっきりだったわ。経営戦略とかさっぱりだし」
「酷かったぞテメェんとこの発表」
「うっ……」
「そんなことないよ。わたしは、勉強になったけどな。切島くんの実演もわかりやすくて、」

 突然、手すりにつかまっていても大きく足を踏み直しそうになるような急ブレーキがかかり、電車が止まった。

「っ、わ」

 さんの肩に、背中合わせになっていたサラリーマンの肘がぶつかり、両手の塞がっていた彼女は前のめりにバランスを崩しかけた。とっさに腕を出そうとして、ぴくりと筋肉がとまる。俺のかわりに、というより、俺の反応よりはるかにはやく、爆豪がさんの二の腕をつかんで支えたのだ。シャツの袖のさかいめで、爆豪はなんのためらいもなく彼女の腕に触れていた。あの、いたずらに破壊と戦闘を好む手のひらが。
 「失礼しました、停止信号です」というアナウンスが頭上に流れる。がくん、とまた車体が前後に揺れ、再び動きだすまで、俺の右手は行き場もなく中途半端にかたまったままだった。

「ありがとう、爆豪くん」
「場所かわれ」
「え、うん」

 爆豪はさんの腕をつかんだまま、自分と場所を入れ替えさせた。吊革につかまらなくてもいいように、手すりに彼女の背中を預けさせ、さりげなく人ごみの盾になるように自分はドアに右肩をもたれる。その一連のふるまいが呆気にとられてしまうほどなめらかで、さんはしばらくぽかんとして爆豪を見上げていたが、俺だって似たような顔をしていたに違いない。俺のほうをちらっと見やり、彼女は急に気まずそうに目を伏せたり、泳がせたりした。そんな動揺を見せられたら、ますます何を話したらいいか分からない。そのときの俺たちは、もう、さっきまでなんの話をしていたのかすっかり忘れてしまっていた。

「あ……混んでて暑いねえ、なんか」

 つたなくへらりと笑いながらそう言って、さんはかばんを脇に抱えなおし、シャツの胸ポケットに挿していたヘアピンで前髪をふわりと留めた。彼女の瞳と同じ色のガラス玉が一粒ついた、シンプルなデザインの髪留めだった。ああ、暑いなあ、ことしは梅雨も短かったし……そんな会話とも言えない会話を俺たちがつないでいるあいだ、爆豪はドアにもたれたまま、流れる夕景をつまらなそうに眺めているばかりだった。彼女が降りる次の駅までの一分間が、ほんとうに、ほんとうに長く感じられた。まるで、時間そのものを脱ぎ捨ててしまったみたいに。
 彼女がひと足先に電車を降りてしまって、やっと一息ついたとき、俺の脳裏にはなぜか二人並んだ駅のホームの情景がよみがえった。彼らの並ぶ距離は、ただの実習仲間にしては近くなかったか。夕暮れを巻き戻して、過ぎ去った二人を観察してみても、確かな答えは出なかった。

「……さんってさ」

 その名前を口にしただけで爆豪がぎろりと俺を睨む。睨んだつもりはないのかもしれないが、俺は言葉が詰まった。聞けない。何を言うつもりかもあやふやだったが、そんな端的な急ブレーキが頭のなかでかかった気がした。

「なんだよ」
「……えー……と、話しやすいし、感じのいい子だったなあ、と」
「で?」
「いや、はい、それだけです」

 爆豪は何も言わなかった。ほんとうに、たったそれだけで彼女の話は終わってしまった。
 翌日の彼らの成果発表は、あの相澤先生が「よくまとまっていて視角もいい」と褒めるほど素晴らしいものだったし、発表をもとにした『爆破』の応用法と費用対効果についてのさんの課題レポートは経営科で一番の成績をとったという。
 あの日から、爆豪とさんが二人で居るところは一度も見ていない。夏休みは短く、濃く、めまぐるしく、そのせいもあって秋が訪れる前に雄英は全寮制の学校に様変わりした。もう電車をつかって通学をすることもない。外出には担任の許可が要る。学内でも、ヒーロー科と経営科は教室がだいぶ離れていて、すれ違う機会でさえなかなかない。俺の頭から彼女のことや、あの日の二人のことが抜け落ちるまで、さして時間はかからなかった。
 ずっと、忘れていた。無かったことにすらなっていた。再びまざまざと彼女の存在が胸に立ち現れてきたのは、つい一週間前のことだ。あの日以上の偶然の上で、俺はまた、二人を目撃してしまったような気がした。教室でも、放課後のプラットホームでもなく、男子寮のアイツの部屋で。

「爆豪ースマン、まだ起きてっかあ」

 午後十時半。断じてノックをしなかったわけじゃない。ただノックと同時にドアノブをひねってしまっただけだ。じじいかよってぐらい毎日早く寝るやつだから、どうせ寝ていて鍵が閉まってるだろうと思っていたせいもある。それが、その日はめずらしくまだ爆豪が起きていた。すんなりとドアがひらいてしまい、俺は内心焦った。自分でそうしたくせに、だ。
 俺がドアをひらいたとき、爆豪はベッドに胡坐をかいて座っていた。じつに素早く、さりげなく、爆豪は右手をまくらの下に滑りこませたが、それがスマホを隠すそぶりで、直前まで誰かと電話で話していたのだということぐらいは、俺にもなんとなく察しがついてしまった。

「……あ、わり。出直す?」
「用件を言え」
「いや、寝ようと思ったら今日の演習でやった肘が痛んでさ……なんかサポーター的なの借りられねえかと」
「……チッ」

 トモダチに向かって舌打ちですか、爆豪さん。それでも、なんだかんだベッドを降りてクローゼットを漁ってくれるわけだし、いきなり部屋に入った不届き者は俺のほうなのだから、文句などつけようもない。背を向けて爆豪が収納ケースをひっくり返しているあいだ、俺は、手持ちぶさたにドアに寄りかかって、ビーサンを脱いだ足裏でふくらはぎをこすったりしていた。
 視線を落とすと、洗面所そばのラックの下で、何かがきらりと光るのが目についた。
 何だろうと思い、腰をかがめてラックの隙間に手を伸ばす。俺の指がつまんだもの。それは、一本のヘアピンだった。
 留め具についた、一粒の薄青いガラス玉を親指のはらでなぞったとき、俺はあの夏の日のことをいっぺんに思いだした。同じ色の彼女の瞳も。二人の並ぶ影も。爆豪の、言葉少なな、彼女に向けた静かな優しさも、すべてを。

「何してんだ」

 頭上から声をかけられて俺はヘアピンをラックのなかに落としてしまった。背後を隠すようにバッと立ち上がる。爆豪は怪訝そうな目をして俺を見ていた。だらりと背中に汗がしたたる。やましいことを見つけられたのはまるで俺のほうだ。なんとかごまかそうとして、俺は、爆豪が探しだしてくれた腕用のサポーターを焦ってひっつかんだ。

「いやちょっと屈伸を……おっ、サンキュー!これこれ」

 あのヘアピンは今、どこにあるだろう。まだラックの底に沈んだままなのか。ちゃんと見つかって、本人の手もとに戻ったのだろうか。彼女のブラウスの胸ポケットから、あるいは、つややかな前髪から、あのヘアピンを抜きとったであろう手指のことを考えると、みぞおちのあたりがざわついて、それからしんと静まる。
 あの部屋で彼女からヘアピンを奪うことができるのは、たったひとりの男だけだ。



「――うあ、さんこっち見た」

 レースを終えて、膝に手をあてて息をしていた彼女がふと顔を上げた。大きく目をみひらいて、それから、かすかに笑っているように見える。さんは、ついさっき盛大にすっ転んだとは思えないきらきらした光を溜めた目をして、ジャージの袖口に隠した指先を軽く揺らした。なんで、手を振られている当の本人は涼しい顔をしているのに、俺ばっかりこんなに焦れているのだろう。一週間前のことが頭にこびりついていて、まともに彼女の顔を見下ろせない。遠くてよく分からないが、彼女は今、あのヘアピンをつけているのだろうか?

「アレお前に向けてんじゃね。俺ら話したこともねえしさ」
「おい、手ェ振り返してやれよ、バクゴーくん」
「知るか。ドベでへらへらしてんじゃねー」

 つうかはよ行けや、と肩を乱暴に張り、爆豪はようやく二人のやじ馬の腕を振り払った。はいはい、と唸る爆豪をいなして上鳴と瀬呂は先に歩いてゆく。もう、このあたりは慣れだ。爆豪がポケットに突っ込んだ両手を出すことはなかったが、体育教師の集合の笛が鳴って彼女が踵を返すまでの数秒、彼らは紛れもなく見つめあっていた。細い糸をたゆみなく張ったまなざしで、お互いに、相手しか見えていないみたいな静けさを分けあって。
 密な世界にも、よくよく目をこらせばわずかなほころびがある。落としたヘアピン。ホームに並ぶ影の近さ。二の腕をつかむ手。そして、何も言わずとも何かを伝えあう目と目。

「お前が先に見てたんだろ、さんのこと」

 あの夏、尋ねることのできなかった二人のことを、秋の行き止まりに至ってようやく言葉にしている。彼女の名前を言っただけで睨みつけられたのだから、てっきり今度は怒鳴り散らされでもするかと思っていたが、爆豪の反応は、俺の予想とはまるで正反対のものだった。ああ、そうか。二人はもう、あの夏とはまったく違う季節のなかにいるのだ。
 俺を一瞥した爆豪の目のなかには、まだたったひとりに向けた静けさの名残りが沈んでいるような気がした。そんな目つきをされたら、うすっぺらで安直な自分の一言をすぐ、恥じてしまいそうになる。

「さあな」

 イエスでもノーでもない。かといってとぼけているのではない、むしろ何かを不敵に曝すように、爆豪は口の端を上げてみせた。つねに導火線に火がついているような男が、自分からふっとその火を消すとき。爆音と爆風にかき消されてしまいたくないものを、奴はその静けさのなかに隠しているのかもしれない。唇の前に指を立てられるよりずっと、その微かな笑みは、俺からそれ以上の詮索の言葉を奪ってしまった。
 ちくしょう、かっこいいじゃねえか。









THE END

2018.8