4 : & for you



この便りがあなたに送る最初で最後の手紙になってしまうことをお許しください。
あなたがこの手紙を読むころ、俺はきっと壁の中にはいないだろうと思います。そして運よくまたここに戻ってこられるかもしれないし、そのまま二度と戻ることはないかもしれない。だけどそんなことは、あなたの人生には関係のないことです。いや、関係のないことだと思ってください。俺はもうあなたに会うことはできないから。

あなたと出会ったのも、こうして別れの手紙を書くのも、俺にとっては兵士としての任務のひとつに過ぎません。それなのに俺はいつの間にか、ひどく出すぎたことを考えるようになっていた。そのことに気づかされた。自分では、気づけなかった。いやもしかしたら、気づかないようにしていたのかもしれない。いずれにせよこんな腑抜けに、あなたに会う資格がどうしてあるでしょう。もとよりあなたにはふさわしくない命です。そんな些末な心臓をたとえ束の間でも撫でてくれたあなたには、いくら感謝を尽くしても足りません。こんな言い方はおかしいと笑われてしまうかもしれませんが、心から、そう思っています。

勝手な決断をした俺をあなたは憎むかもしれない。恨むかもしれない。だけどこうして関係を断ち切ることは、何よりあなたへの敬意と信頼のあかしでもあります。それをどうか分かってください。これは最初で最後の、俺からさんへの我侭です。

この手紙を朝一番の早馬に託します。
いつまでもお元気で。あなたと過ごした時間を決して忘れません。

第104期調査兵団所属 ジャン・キルシュタイン










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